浪江町文化復興ライブラリー
もう一度、みんなで取り戻そう浪江の文化
浪江町の文化とは、浪江町での生活のすべてでした。しかし今、浪江町で生活することは叶いません。
いつ、浪江に戻って震災前の生活ができるのか見えない中で、仮の町や借り上げ住宅などで生活することになります。でも、私たちはどこで生活しても浪江町民です。浪江で生活してきた習慣や言葉は五感すべてに染み込んでいます。
しかし、現在の生活の場は浪江町でなく、隣り近所に知り合いはいません。この環境が続くと浪江の記憶はどんどん薄れていき、忘れてしまいかねません。私たちから浪江の記憶が失われるということは、浪江町が永遠に消えてしまうということです。
「帰る・帰らない」ということは問題ではありません。帰るにしても、帰らないにしても私たちは浪江町民なのです。「帰る・帰らない」と問う以前にしなければならなかったことがあります。それをせずに「帰る・帰らない」と問うたために、浪江町民が分断された風潮がまかり通ってしまいました。これは大きな間違いです。
私たちがやらなければならないことは、私たちにとって「浪江とは何だったのか」です。つまり、浪江町の全文化を確認し、それを町民全員が共有することです。これを復興のための大前提としなければ、とても殺伐とした復興になりかねません。
私たちは浪江町に、浪江の文化によって生かされてきました。このことを今、再度確認する時です。どこで生きていくにも、私たちは浪江町民なのです。
「浪江文化復興ライブラリー」は、「なみえ復興大学」内に設置し、当面はHP上で展開します。以下の浪江町の文化は、浪江町民だけでなく、観光などで訪れた町外の方など誰でも応募参加できます。そして誰でもどこでも閲覧でき、最終的に紙媒体として冊子を作成し、町民の各家庭に1冊配布をめざします。
写真 de 浪江
震災前の浪江町を写真で再現します。地図ソフトを使用し、写真をマッピングします。年代ごと地区ごとなど、集まった作品によって構成します。
本 de 浪江
浪江町史などの正規の刊行物のほかに、『村の野仏たち』(佐藤俊一著 北国詩の会)、『志士 苅宿仲衛の生涯-自由民権家の軌跡』(松本美笙著 阿武隈史談会)など民間の著者によって、浪江の文化財や歴史・人物・文化・伝統行事などについて書き残された貴重な財産と言える著作が数多く出版されてきました。これらの散逸を防ぎ、所在を調査して、絶版などは復刊できるようにしていきます。
また、浪江町に関する記事等が掲載されている書籍等の収集も行っていきます。浪江町民にとっては浪江のアイデンティティを再度喚起し、未来の浪江町民にとっては浪江の歴史的なアイデンティティを知らしめる使命があります。浪江文化復興ライブラリーはその集大成として位置付けます。現時点では、収集と目録の作成とし、閲覧場所は今後の課題です。また、電子書籍化も視野に入れていきます。
風習 de 浪江
十日市(権現堂)、えびす様(藤橋)をはじめ、季節に合った祭事が多く、またそれに合わせた風習が生活に潤いと規範をつくっていました。これは浪江町の良き伝統であり、これらをすべて網羅することによって、年間を通して浪江町でどのような生活をしていたのかを思い出すことができます。
食 de 浪江
ふるさと浪江をダイレクトに感じるものとして、食は欠かせません。季節に合った山海の豊かな恵みに舌鼓を打つ醍醐味は、これほど贅沢なことはありません。シドケなど山菜の天ぷらや白魚やマグロ・ヒラメなどの刺身、鮭などをはじめとする浪江の食材は、他に代用のきかない貴重なものばかりです。また、漬物は各家庭によって味が違うほど独自の進化を遂げていました。こうした浪江ならではの食文化を絶やさないためにも、各家庭で継承されている伝統的な料理のレシピを収集することによって、浪江の豊かな食生活を振り返り、いつの日か浪江の食材を使った味自慢コンクールなどを開催します。
方言 de 浪江
方言は、ごく一定の地域で使われる言語体系であり、生きた文化として最も浪江を感じることができます。相馬弁保存会(http://emosuzu.fc2web.com/index.htm)と協力関係を結んで、浪江の方言をある程度体系化して保存していきます。
地名 de 浪江
地名にはそもそも由来があります。地球の特定の表面につけられた固有の名称です。それだけに地形、空間、自然物などに拠るものがほとんどで、防災の目安ともなっていました。つまりメッセージでもあるのです。しかし、度々の町村合併などで先人の地名に込めたメッセージを無視して地名を変更し、経済優先の土地乱開発も相まって甚大な被害をこうむったのは、この度の震災でも指摘されています。そうした反省の念も込めて、浪江町を地名から見直すことは大事です。専門家などの協力を得ながら、地図にマッピングしていきます。また、歴史的な位置付けもしていきます。
例)「浪江町大字権現堂字新町」で、大字名までは検索できますが、「字」以降の地名を探すのは難しいです。全世帯に参加してもらえれば、全字名もわかります。
民話と伝承 de 浪江
歯形の栗(大掘)・安波様(請戸)・甚六の狐退治(棚塩原下)・河童のくすり(酒田)・反渕物語(昼曽根)・於北物語(津島)・あっこ渕(津島)など知られている民話をはじめ、聞き取りなどで発掘にも力を入れていきます。
伝統芸能 de 浪江
伝統芸能は、請戸田植え踊りをはじめ、各地区で継承されていた獅子舞などの現状を調べ、中止を余儀なくされている地区は復活の援助を考える。伝統芸能の各保存会リストをアップします。活動中の保存会全体での発表会などを行います。
トリビア de 浪江
浪江森林鉄道(トロッコ)、苅宿仲衛(明治の自由民権運動家)など、浪江町民でも意外とわからないことを紹介します。