top of page

こころの復興と芸術学部

復興はモノ作りではない。こころに宿る浪江のアイデンティティを喚起する
 どこにいても、どこに住んでも浪江出身であることから逃れられないし、むしろ浪江町民であることに誇りを感じる。これが3・11を体験して以降、浪江町民に課せられた逃れられない問いに対する答えです。浪江町のあらゆる風景、浪江町のあらゆる思い出、そして浪江町のあらゆる人々。これら何気ないことが混然一体となってあった生活が、今はありません。知らない土地での生活、知らない人たちの中で暮らす、浪江町以外の所で生活する大変さは、被災した人でなければわかりません。そして、故郷・浪江町の素晴らしさを改めて知ることになります。しかし、時の経過は残酷です。経年による忘却は、予想以上に私たちを侵食しています。親しかった人の名前、美しい海山並み、町並みや地名が一つひとつ日を追って記憶から消えていっています。それは浪江町が消えていくことです。
本学部は、復興の最も根本的なテーマとして、浪江町のアイデンティティの復興を掲げます。私たちは何を失い、そして何を失っていないかを喚起し続け、それを最も喚起する芸能やアートによって問いかけ続けます。

 

 

■これまでの吉増剛造さんの浪江町復興活動

 吉増さんは、今年の3月10日、そして11日と浪江の請戸に行き、浪江の空気を吸い、地に触れて、2つの作品を創りました。その様子はfacebookに残しましたので、ご覧下さい。

 

吉増剛造、浪江・請戸に立つ3/11

 

吉増剛造、浪江・請戸に立つ3/12

 

そして、3月16日に二本松の浪江・請戸のための2作品、「請戸-Blue Door」と「なみえ日記 2013.3.5~3.15」が発表されました。「請戸-Blue Door」は、約8分のビデオ作品です。また、「なみえ日記 2013.3.5~3.15」はA3の原稿用紙に様々な色の文字で埋め尽くされたものです。吉増さんは、浪江との関わりは、これっきりでは到底終われない。継続して浪江を訪れていきたいと言われています。期待したいと思います。

本大学にお迎えした先生方に共通するものは、1回きりの出会いではなく、継続することを言われていることです。復興を考えた時、この「継続」という言葉がキーワードになるのではないかと思います。

 

浪江・請戸のための2作品、「請戸-Blue Door」と「なみえ日記 2013.3.5~3.12」
 


 

■専任アドバイザー
吉増剛造(よしますごうぞう) (写真あり 約3点 後送)
1939年(昭和14年)、東京生まれ。多摩の福生で育つ。 慶應義塾大学卒。
現代日本を代表する先鋭的な詩人の一人として世界的にも高い評価を受けている。詩の朗読パフォーマンスの先駆者としても知られる。自身の詩と組み合わせたパノラマカメラや多重露光を多用する写真表現、彫刻家若林奮との共同制作による銅板を用いたオブジェ作品を創作。また、自ら撮影・録音・編集する映像作品gozoCineは、50年余に及ぶ詩人の軌跡を新たな角度から照らし出すとともに「映画」に未踏の領域を開く試みとして、言語とイメージの現在へ苛烈な問いを投げかけている。今回発表される浪江町請戸でのパフォーマンスも、「請戸-Blue Door」としてラインナップされる。2003年、紫綬褒章受章。
詩集『黄金詩篇』(高見順賞受賞)、『オシリス、石ノ神』(現代詩花椿賞受賞)、『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(芸術選奨文部大臣賞受賞)、『螺旋歌』(詩歌文学館賞)、『表紙』(毎日芸術賞受賞)など受賞作はじめ著書多数。また本年、旭日小綬章を受ける。

bottom of page