理念
自足的に幸いを実感できる「OLD & NEW という価値観」の創出
浪江町は東電福島第一原発事故の放射能汚染地として壊滅的な被害を受け、道なき多難な前途を強いられています。と同時に、その規模・内容は地震・津波・放射能の複合災害という、史上稀なる負の遺産として、すでに人類には記録・記憶されています。
浪江町には、この事故の当事町として新たな使命が生まれました。それは、誤解を恐れずに言えば、「放射能に汚染された町にしか許されない、選ばれた町・選ばれた町民」として、この事故から復興までの全プロセスを詳細に記録・保存・検証し、日本のみならず世界に向けて発信し、後世に正しく伝え続けることです。このことが、浪江町のみならず全人類の安全・安心な未来に多大な貢献をすることとなります。
東電福島第一原発事故という事実は、理不尽な不幸としか言いようがありません。しかし、浪江町の復興もまた事実としなければなりません。そのためには、最も困難な放射能問題を避けることはできず、むしろ取り込み、乗り越えていかなければなりません。それを可能にするには、復興の理念を全浪江町民が共有し、復興に向けて立ち上がる動機を明確にすることです。浪江町のこれまでのアイデンティティーは、原発事故によって破壊されましたが、消えることのない町民のこころに残る浪江を復興の拠点として、事故以降の浪江町の新たな使命を確認し、事故以前・以後ということに象徴されるあらゆる既存の枠組みをも乗り越えた浪江町のアイデンティティーを求め続けることが、本質的な浪江町の再生につながります。
なみえ復興大学は、この再生浪江町の新しいアイデンティティーの象徴として浪江町民の誇りとなり、復興への大きな「希望」となります。そのために放射能問題を含めた複合災害を「記録・保存・検証」し、国内外に「発信」するための、効果的で体系的なカタチとして大学というシステムを構築します。この復興に向けた全プロセスが、全人類に向けた浪江町の「希望のメッセージ」です。
基本方針
1 誰もが参加できる大学
本学は正規の大学ではなく、浪江町の復興に特化した民・学・官協働のゆるやかな大学であり、
学内では誰もが先生であり、誰もが学生となります。唯一の条件として「なみえ学」を履修します。
*「なみえ学」は、浪江町の原発事故以前の歴史・地勢・文化と事故以降の復興理念に則った「新しい価値観」の創出ををめざします。
2 「謙虚さ」のある大学
本学では、参加者の専門領域では存分にその専門性を発揮してもらいますが、域外については「学ぶ」という
「謙虚さ」がなければ参加できません。復興は、全人類の創意を求め、受け入れる寛容を求められています。
それだけ、この度の震災からの復興は困難であり、だからこそ復興する意義があります。
そのために必要なことは、「謙虚さ」です。これは日本の、東北の、そして浪江町のアイデンティティでもありました。
しかし、これは近代以降、顧みられなくなり、現代にあっては日本人の失われた気質となり、その象徴としてこの度の3・11を迎えなければなりませんでした。その代償はあまりにも悲惨ななものとして、全人類に大きくのしかかっています。これはある意味で必然の事態だったのかもしれません。3・11を体験した私たちは、文字通り「謙虚」に反省に立ち、未体験の復興を達成するための
3 防災学部を中心とした総合大学
参加者は、民・学共に、本大学準備室(現時点)との了解を得る。参加大学はアカデミズムと実学の実験の場として本学に参加する。
本学は、浪江町民の全生活の復興をカバーするため、既大学の全学部が対象となる。
したがって、本学は防災学部、放射能学部を中心とした総合大学をめざす。
参加者は浪江町民はじめ、全人類が対象となる。学部設定の基本は、浪江町復興計画策定委員化に設置された6つの部会
(ふるさと再建、津波被災地復興、町外コミュニティ、生活再建、産業再生、教育・文化・健康)をカバーするものとする。
4 Webからリアルの大学へ
後記のスケジュールにあるように、大学としての活動は現場で実施するが、大学としての体裁は当面Web上の仮想大学である。
最終的には、浪江町に本学校舎を設置することをめざします。
5 支援する団体・個人に対してもアクセスしやすいワンストップ型情報提供
視点を復興の重要なパートナーである支援側に向ければ、被災・復興情報を得るためには相当な労力を要する。
これは情報発信側の問題でもある。本学は、この問題を解消するため情報の一元化を図り、
最新情報と適正なマッチングをタイムリーに実施できるよう、情報のワンストップ型をめざす。
また、これは浪江町のイメージアップにもつながる。